Agentをwhileで囲み、「成功するまで続けて」と渡すだけでは、Loop Engineeringにはなりません。進捗がなくても費用を使い、同じToolを繰り返し、止める判断までAgent自身へ任せることになります。
Loop Engineeringは、AI Agentが「観測する、判断する、実行する、結果を検証する」という反復を、どの条件で続け、止め、人間へ戻すか設計することです。
Goal、進捗、検証、Retry、Budget、停止条件、状態の引き継ぎを一つの制御系として扱います。
この呼称は2026年に広がり始めた新しい実践用語です。標準化された定義ではありません。このGuideは2026年7月1日時点の一次情報を基準に、長時間Agentで共通する設計課題を整理します。
LoopはAgentの外側で制御する
AgentはGoalとSuccess criteriaに基づいて行動し、観測結果をVerifierまたはEvaluatorで判定します。回復可能なら次のTaskへ戻り、完了なら終了し、BlockedまたはUnsafeならHuman handoffへ切り替えます。
- GoalとSuccess criteriaを受けてAgentが行動します。
- 結果を観測し、VerifierまたはEvaluatorがDoneか判定します。
- 回復可能ならStateまたはTaskを更新してAgentへ戻します。
- 完了ならCompleteへ進み、BlockedまたはUnsafeならHuman handoffへ渡します。
Model自身へ「終わるまで続けて」と書く方法では、停止と費用を外から保証できません。OrchestratorやHarnessが、Step数、Deadline、Tool権限、検証結果を見てLoopを制御します。
Agent LoopとLoop Engineeringは範囲が違う
AI Agentの基本Loopは、ModelがToolを呼び、結果を受けて次の行動を選ぶ実行構造です。
Loop Engineeringは、そのLoopを本番や長時間作業で維持するための設計を扱います。
| Agent Loop | Loop Engineeringで追加する設計 |
|---|---|
| Modelを呼ぶ | Model、Prompt、ContextのVersionを固定する |
| Toolを呼ぶ | 権限、Idempotency、Retryを制御する |
| 結果を返す | Outcomeを独立に検証する |
| 続行を選ぶ | 進捗、Budget、Deadlineで続行可否を決める |
| 終了する | 完了、失敗、停止、人間移譲を分ける |
完了条件をAgentの自己申告にしない
長時間Agentは、見た目の整った成果物を作り、「完了」と回答できます。実際の機能、外部状態、受け入れ条件が満たされたかは別です。
- Testが通った
- Browserで主要Flowを完了できた
- API ResponseとDatabase状態が一致した
- 指定したFileが生成された
- 安全性Checkを通過した
- Evaluatorが閾値を満たした
AnthropicのHarness Designは、GeneratorとEvaluatorを分け、各SprintのContractと検証を使う反復を示しています。生成と合否判定を同じ出力だけに任せないことが要点です。
進捗がないLoopを止める
同じErrorに対して文言だけを変え、何度も再試行する場合があります。回数上限だけでなく、進捗を判定します。
- 同じTool引数とErrorの反復
- 同じTest failureの継続
- 成果物Diffがない
- 評価Scoreが改善しない
- Context取得だけを繰り返す
- 費用または時間が上限へ近づく
状態Fingerprintや失敗分類を使い、同じ状態へ戻ったら別Strategy、人間へのHandoff、失敗終了へ切り替えます。
BudgetはTokenだけではない
LoopのBudgetには複数の上限があります。
- Model call回数
- Input / Output Token
- Tool call回数
- 外部API費用
- Wall-clock time
- 同時実行数
- 書き込み操作数
- 人間のReview時間
一つのTaskがBudgetを使い切らないよう、User、Tenant、Workflow単位でも上限を持ちます。途中停止時に再開できるよう、状態とArtifactを外部へ保存します。
Retry、Reflection、Replanを分ける
同じRequestをそのままやり直すRetry、結果を評価して修正するReflection、前提やTask分解を変えるReplanは別の操作です。
- 一時的なNetwork error: Backoff付きRetry
- Test failure: ErrorとDiffを渡して修正
- Goalの解釈違い: Planから見直す
- Permission denied: Retryせず権限確認へ戻す
- Safety violation: 即時停止または人間へ移譲
すべてを「もう一度考えて」で処理すると、原因と費用を追えません。
新しい用語として範囲を明示する
2026年7月のLoop Engineeringに関するPreprintは、Prompt、Context、Harness、Loopを異なる設計層として位置付けています。ただし、Preprintであり、業界標準の定義が確定したことを意味しません。
OpenAIのHarness Engineeringでも、AgentがReviewと修正を繰り返すFeedback loopや、環境側のConstraintが扱われています。Loop Engineeringは新しい名前ですが、State machine、Workflow、Retry、Queue、Circuit breaker、Evaluationといった既存のSoftware Engineeringを土台にします。
よくある誤解
Loopを長く回せば品質が上がる
Verifierが誤っている、Contextが不足している、進捗がない場合は、費用と誤操作が増えます。改善を測れないLoopは止めます。
Agentが完了と言えば停止してよい
成果物、Test、外部状態を独立に確認します。自己申告は停止候補のSignalに留めます。
Retry回数だけ決めれば安全に止まる
一回のTool callでも取り消せない影響があります。権限、Approval、操作回数、費用、Deadlineを合わせて制御します。
Loop EngineeringがPrompt Engineeringを置き換える
Promptは各StepのInstructionに必要です。Loopは複数Stepをどう制御するかを扱い、置き換えではありません。
EastBraver Labsの判断基準
EastBraver Labsでは、Loopを自律性の高さではなく、止められるか、再開できるか、検証できるかで評価します。
完了条件はAgentの外側に置き、同じ失敗の反復、Budget超過、権限不足、安全性違反を停止条件にします。更新系Toolは、Loop回数に関係なく一回ごとの認可とIdempotencyを確認します。
長く回ること自体に価値はありません。
人間が付きっきりにならなくても、途中状態と判断理由を後から追える。その状態を作れてから実行時間を伸ばします。